白雪姫に極甘な毒リンゴを

「百目さん、呼んだ?」


 七星くんが桃ちゃんに向ける笑顔が
 見たくなくて、
 私は黙ってうつむいた。


「七星くんに聞きたいことがあってさ。

 昨日、六花のたこ焼き食べたでしょ?
 おいしかった?」


「え? 
 ああ、すごくおいしかったけど」


 二人の顔を見る勇気がなくて、
 顔があげられない。


 桃ちゃん、何をするつもり?


「じゃあ、六花、決まりね!」


「ん?」


「もうすぐ六花の誕生日じゃん。
 その日、六花の家で、
 たこ焼きパーティーしよう!」


「あ……うん。良いけど……」


「七星くん、ありがとね。

 ただ、六花のたこ焼きがおいしかったか
 教えてもらいたかっただけだから」


 桃ちゃんの言葉に、
 七星くんは表情を曇らせ、
 くるりと後ろを向いた。


 は~ なんだ。


 ただ、
 七星くんに確認したかっただけなのか。


 とりあえず一安心。
 とゆっくり息を吐いていると……


「六花のお誕生会が、
 私たち二人だけじゃ寂しくない?

 1組の紫音(しおん)くんも誘っちゃおうよ」


「え? だ……だれ?」


 初めて聞く名前すぎて、
 なんて答えていいかわからない。


 もしや、桃ちゃんの、好きな人?


「六花、知らないの?
 バスケ部の紫音くんだよ。

 1年なのにレギュラーだって、
 女子たちが騒いでるじゃん!」


 全く誰かわからない……


 でもなんで、
 その紫音くんって人を呼びたいんだろう……


「紫音くん、かわいそう……
 六花のこと好きなのに……」


 え? 

 
 ええ!!!!


 ちょっと! 桃ちゃん! 


 嘘をつくなら、もっとましな嘘つこうよ!


 私のことを好きって言ってくれる
 変わり者なんて、
 この世にいないんだからね。


 あ……桃ちゃんと、お父さん以外……。



「嘘じゃないから。
 この前、紫音くんに頼まれたんだから。

 六花と二人で話したいから協力してって。
 で、いいの? よくないの?

 六花の誕生会に、紫音くんを誘っても」


「え……と……」


 私がなんて答えていいか悩んでいると……


「良くない……」


 え? 

 
 今の声って……


 七星くん?

< 37 / 281 >

この作品をシェア

pagetop