白雪姫に極甘な毒リンゴを
ドキドキのお誕生日
今日は私の誕生日。
お兄ちゃんも、
しぶしぶOKをしてくれたから、
今日は我が家で、
私のお誕生日&たこ焼きパーティーを
することになりました。
6人掛けのテーブルにに、
たこ焼き器を置いているとき、
玄関のインターフォンが鳴った。
「あ、桃ちゃんだ!」
モニター画面で確認した私は、
急いで玄関に行きドアを開けた。
「桃ちゃ~ん!」
「りっか、お誕生日おめでとう!って……
どうしちゃった??」
桃ちゃんは私を見るなり、
コイみたいに口をぽかんと開けて
固まっている。
何に驚いて、固まっている?
「六花、学校の時と全然違うじゃん!」
桃ちゃんの言葉に、やっと意味が分かった。
私がメガネ外して、
胸まであるストレートな髪をおろして、
赤いワンピを着ているからだね。
「家では、この格好をしなきゃいけないの。
そうしないと、襲われちゃうんだよ。
赤城家の先祖に」
「もう、
真面目な顔でそんな冗談言わないの」
「冗談じゃないよ~
斧を振り上げて、襲ってくるんだよ~」
「六花の妄想って、
私の上を行くから面白すぎ!」
完全に、信じてくれてないし……
そんな桃ちゃんは、
リビングに一歩足を踏み入れ、
早くも本日2度目の硬直状態。
「す……凄すぎる!!」
ま、桃ちゃんが固まっちゃう
気持ちもわかるけど……
一続きになっているリビング、ダイニング、
キッチン、吹き抜けのいたるところに、
お誕生日飾りが飾ってある。
天井には、
小学生のお誕生会を思わせる輪飾りが、
波のように飾られ、
壁には、子供の頃の私の写真で、
『HAPPYBIRTHDAY』の文字が
作られている。
折り紙で作ったバラや動物たちが
飾られていたり、
100個以上の赤と白の風船が
ユラユラ浮いていている。
「六花、
この部屋のバースデー飾りすごいね。
パーティーするから、
六花が飾りつけしたの?」
「私じゃないよ」
「もしかして……一颯先輩?」
私はコクリと、うなずいた。
「えぇぇぇぇぇ!!!」
「ちょっと、桃ちゃん、
声が大きいいってば!
2階にいるお兄ちゃんに聞こえちゃう」
「だって一颯先輩って、
いつも六花にひどいことを言って
ばっかりなんでしょ。
今日会ったら、
『六花のことイジメるな』って、
文句を言ってやろうと思っていたのに。
六花のためにここまでしてくれる
人だったなんて、想像してなくてさ」
お兄ちゃんは子供の頃から、
私の誕生日になると、
部屋中を飾り付けしてくれる。
多分初めは、
誕生日なのにお母さんがいない淋しさで
泣いてばかりいた私を、
なぐさめるために
始めてくれたんだと思うけど……
昨日も夜遅くまで、
はしごに上って作業をしてくれていたっけ。
毎年『お兄ちゃん、ありがとう』って
素直に言いたいのに、
結局何かしらのことで言い合いになって、
素直に感謝ができていない。
あとでお兄ちゃんに、
ありがとうって言わなきゃな。
そう思っていると、
ピンポーン!
玄関チャイムが鳴った。
モニターで確認すると、
七星くんとクルミちゃんだ。
幼なじみで家も近くみたいだけど、
ここまで一緒に来たんだね。
モニター越しの二人を見ているだけで、
胸がギューって締め付けられる。
「六花、大丈夫?」
「あ……うん。
玄関に行ってくるね。
桃ちゃんは、ソファにでも座っていて」
私の足は、
歩くのを軽く拒否しているかのように、
ゆっくりにしか進めなかった。