白雪姫に極甘な毒リンゴを

 午前中の授業が終わった。


「六花、お昼にしよ!」
 

 私のところにニコニコ笑顔で
 駆け寄ってきてくれたのは、
 唯一の友達。

 百目 桃華(ひゃくめ ももか)ちゃん。


 私は『桃ももちゃん』って呼んでいる。


 170センチ越えの長身に、ほっそりした手足。


 腰まである黒く艶めいた髪はサラサラで、
 綺麗な顔立ちに、私も見惚れてしまうほど。



「桃ももちゃん、ごめん。
 私ね、お兄ちゃんにお弁当を届けに行ってくる」


「じゃ、六花が戻ってくるまで、
 雑誌読んで待っているから」


 私は桃ももちゃんの
 サバサバしているところが大好き。

 
 初めて桃ももちゃんを見た時は、
 誰も話しかけるなオーラがビンビンに出ていて、
 ヤンキー?って感じで怖くて近寄れなかった。

 でも今は甘えさせてくれる、
 優しいお姉さんって感じ。


 あ……そんなこと考えている場合じゃなかった。


 早くお兄ちゃんに、
 たこ焼き弁当を届けなきゃ。


 2階の渡り廊下を小走りしていると、
 女子たちの黄色い声が聞こえてきた。


 窓からふと外を見る。


 やっぱりここだったか。


 中庭の芝生広場にシートをひいて、
 30人くらいの女子が笑いあっている。


 その中心にいるのは、やっぱりお兄ちゃん!!


 隣には十環先輩も。


 赤とピンクのベストが
 目立っているから間違いない。


 私は急いで、中庭に向かった。
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