白雪姫に極甘な毒リンゴを
二人をリビングに通すと、
クルミちゃんはわかりやすく感動している。
お兄ちゃんが飾ってくれた、このお部屋を。
その隣いる七星くんは、
クルミちゃんに優しく微笑んでいた。
私が桃ちゃんのところに戻った時、
「六花、お誕生日プレゼント」
桃ちゃんは笑顔で、
水色の大きな袋を手渡した。
「開けてもいい?」
「もちろん!
絶対に気に入る自信あるから!」
なんだろう……
え?
これって……
「浴衣だセットだよん。かわいいでしょ」
「かわいいけど……
こんな高いものもらえないよ……」
「高くないよ。
うちのお母さんが安く仕入れた浴衣。
この浴衣を見た時に、
絶対に六花に着てほしいと思ったから、
お母さんに譲ってもらっちゃった。
お金なんて1円も払ってないから、
気にしないで。
その代わり、浴衣モデルさせられて、
何着も浴衣を着て写真撮られたけど。
あ、一颯先輩、
ちょっと洗面所借りてもいいですか?」
「どうぞ」
桃ちゃんは私の手を引っ張り、
洗面所まで連れてくると、
ガチャリと鍵を閉めた。
「どうしたの? 桃ちゃん?」
「六花、この浴衣、今から着てみて」
「え?
い……今?」
「そう、今。
私が着付けをしてあげる」
桃ちゃんは、ニコニコしている。
こんな綺麗な浴衣をもらったのに、
恥ずかしくて着たくないなんて
ワガママ言えないよ……
私は桃ちゃんに、
浴衣を着つけてもらった。
「やっぱり、私の思った通り!
この浴衣は、六花にしか似合わないよ!」
それは褒めすぎだよ!と思うけど、
この浴衣は他の人には
着てほしくないて思ってしまった。
だって浴衣のデザインが、
夜空に輝く天の川だったから。
星が大好きで七夕生まれの七星くんが、
気に入りそうな柄だから。
「これ着て、
七星くんと花火大会に行ってきな」
え?
七星くんと……
花火大会……?
そんな、ムリだよ……
だって七星くんには……
クルミちゃんがいるのに……
それに私なんかと花火大会に行きたいなんて
七星くんが思うわけないよ……
「六花、本当は行きたいんでしょ?
七星くんと、花火大会」
行きたいよ……
七星くんと、花火大会……でも……
私をまっすぐ見つめる
桃ちゃんの瞳には逆らえず、
私は素直にうなずいた。
「もう、素直な六花もかわいいんだから。
私に任せておいて!
七星くんと花火大会に行けるように、
私がお膳立てをしてあげるから」
確かに……
私の誕生日パーティーに
七星くんが来てくれることになったのも、
りっちゃんの策略のおかげ。
でも、花火大会に私と行きたいって
思う人がいるなんて、
絶対に思えない。
「でも……お兄ちゃんがなんて言うか……
しかも門限が、6時だし」
「そっか。
一颯先輩も何とかしないといけないわけね。
了解!了解!
ま、とりあえずは、
浴衣姿を七星くんに見せよっか。
七星くんが、
どんな反応をするか楽しみだな~」
桃ちゃん!
なんか楽しんでいるでしょ!!
でも、私のために一生懸命なことが、
嬉しくてしかたがなかった。