白雪姫に極甘な毒リンゴを

「りっちゃんのお弁当、
 おいしそうだなっていつも思っていて。

 野菜の肉巻き、食べてみたい。

 俺も、自分で作るからさ。」


 私が作ったお弁当を……
 
 食べたい??


 そんなこと言ってもらえるなんて、
 嬉しくてしょうがない。


 私のワガママも、聞いてくれるかな?


「私も……七星くんが作る……
 エノキの肉巻き……食べたい……」


 こんなこと言っちゃって
 大丈夫だったかな?


 七星くん、どんな顔しているんだろう……


 怖くて見られないよ~


「いいよ。 
 じゃ、月曜日にお弁当交換しよう」


「う……うん」


 七星くんとの約束事ができちゃった。


 しかも、七星くんが私のために、
 お弁当を作ってくれるなんて……


 幸せすぎて、現実だとは思えないよ!


「はい! タコ、切れたよ」


「ありがとう」


 七星くんの顔を見て、笑ってみた。


 お弁当のことも嬉しかったから。


 それなのに、
 すぐに脳から指令が下った。


 『七星くんに、笑いかけちゃダメだよ』って。



 それは、毎日言わされている
 『行ってらっしゃいの3か条』の
 せいじゃない。


 私の瞳が、七星くんの耳に光るピアスを、
 捉えてしまったから。


 クルミちゃんとお揃いの、
 ブルーのピアスを。


「りっちゃん、どうかした?」


「え……なんでもない。

 七星くんの切ってくれたタコ、
 テーブルに置いてくるね」


 私はブルーのピアスを視界に入れたくなくて、
 逃げ出そうとした。その時


「待って! 

 りっちゃん、ここにいて! 
 絶対に動かないで!」


 え?
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