白雪姫に極甘な毒リンゴを
お兄ちゃんを発見したのはいいけど……
う……
この綺麗なお姉さんたちをかき分け、
お弁当を届ける勇気なんか、私にないよ。
その時、お兄ちゃんの右手に、
信じられない物が握られていた。
も……もしや……
あれは……
購買の焼きそばパン????
ちょっと待って、ちょっと待って!
素早く深呼吸をして、
昨晩、お兄ちゃんに言われたことを思い出す。
『六花、毎日弁当に野菜ばっか入れんなよ』
『でも、野菜を入れないと、
茶色一色のお弁当になっちゃうよ』
『は?俺に逆らうつもりか、バカ六花!
明日は、たこ焼き弁当にしろよな!』
そう言われたから私は、
わざわざ5時起きでスーパーに走って、
タコを買って、たこ焼きを焼いたんだよ。
それなのに……
焼きそばパンを食べるなんて……
私は木の陰に隠れ、
お兄ちゃんをじーっと睨みつけた。
「呪ってやる……呪ってやる……
呪ってやる……呪ってやる……」
今すぐ藁人形にお兄ちゃんの名前を書いて、
五寸釘でも打ち付けてやりたい気分。
白衣を着て、頭にはオレンジの火が揺れる、
ろうそくを立てて。
私がブツブツ言っている時、
お兄ちゃんの隣で微笑む女の子と、
目が合ってしまった。
ひゃ!
まずい、まずい!
目が合っちゃったよ。 隠れなきゃ!!
でも、時すでに遅し……
「ギャ~~~!!
木の陰に……幽霊がぁぁ!!」
その女の子の悲鳴が耳に届いたちょうどその時、
毎朝言わされている、
『いってらっしゃいの3か条』が頭に浮かんだ。
『その3、お兄ちゃんには、近寄らない』
は!!
私……その約束……破っているし……