白雪姫に極甘な毒リンゴを
家に着いちゃった……
は~
家の中に入りたくないな……
ため息をつきながら家に入り、
無意識にいつものルーティンを終えて、
キッチンに立った。
ここにいると、
七星くんのことを
どうしても思い出してしまう。
エプロン姿でタコを切ってくれて、
みんなから隠れるように、
お揃いのネックレスを首にかけてくれた、
あの時のドキドキを。
とりあえず、お弁当箱を洗わなきゃな。
お弁当の袋のチャックを開けた瞬間に、
見たくもないカードが目に入った。
太い文字で
『KURUMI』と
はっきり書いてある。
何の迷いもない文字。
ストレートに、
クルミちゃんのことが好きって
言っているようで、
私はカードをくしゃくしゃにして、
ごみ箱に投げた。
恋なんか……
しなきゃよかった……
本気で七星くんのことを好きになる前に、
諦めちゃえば良かった……
お兄ちゃんに毎日言われている。
『男とは絶対に目を合わせるな!
六花はブスなんだから、
お前なんかが男を見てたら、
キモがられるぞ!』って。
その言葉に従っていれば、
こんなに苦しくなることなんて
なかったのに……
心がちぎれそうなくらい、
苦しくなることが……
「今日は……料理作るの……やめちゃおう……
お父さんもいないし……」
私はお兄ちゃん宛にメモを書いた。
『夕飯は、買って食べてください』って。
そして500円玉を、
自分のお財布から出して、
メモと一緒に、テーブルの上に置いた。