白雪姫に極甘な毒リンゴを

 お父さんが買ってきてくれたお弁当。


 私が家で作るよりもサクサクで
 おいしいトンカツを、
 ゆっくり味わいたかったのに、
 お兄ちゃんはそんな時間も許してくれない。


「早く食べろよ!

 食べ終わったら、すぐに始めるからな。
 テスト勉強」


「わかっているよ……」


 私が口をプーっとふくらましたのを見て、
 私に甘々なお父さんが、
 助け舟を出してくれた。


「一颯、そんな急かさなくてもいいだろ?
 俺だってもっと、
 りっちゃんとしゃべりたいんだよ。

 りっちゃん、最近学校はどうだ?
 辛いこととかないか?」


「は? 
 親父は六花の英語の点数知ってるのか?
 11点だぞ。学年ビリだぞ」


 お兄ちゃん。

 そんなことお父さんにばらさないでよ。


 でも、さすがお父さん。
 テストの点なんて、全く気にならないみたい。


「りっちゃんはかわいいから、
 勉強なんてできなくてもいいよな。

 それに英語が得意になっちゃったら、
 留学したいとか言って、
 海外に行っちゃって、
 その国で結婚とかされちゃうかもしれないし。

 英語なんてできなくていい。りっちゃんは」

 お……お父さん。
 すごい妄想力。


 そんな呑気なお父さんを、
 我が家の悪魔が思いっきり睨んでいた。
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