白雪姫に極甘な毒リンゴを
私はタタタとお兄ちゃんから離れ、
校舎の前まで来た。
『カー カー』
校舎の屋根に、
見るだけで鳥肌が立ちそうなくらい
不気味なカラスが、
こっちをうかがっている。
ヒャ~ 怖いよう……
そう思ってお兄ちゃんを見ると、
私を見てニヤニヤ笑っていた。
お兄ちゃん。
ビビリの私が、
カラスにたこ焼きなんてあげられないって、
絶対に思っている!
悔しいよ…… 悔しすぎるよ……
私はお弁当の蓋を開け、
つま楊枝にたこ焼きを刺した。
恐怖で立っていられないよ……
そして私はその場にしゃがんで、
うつむきながら、
空にたこ焼きを突き出した。
怖い……怖いよう……
どうかカラスさん……
私の手は……食べないでね……
私がビクビク震えていたその時
「ひゃ!!」
私の指が、軽く食べられた。
でも……この温もり……
カラスじゃない……
なに? なにが起きたの?
と顔を上げると、
私の目の前に、
透き通るように綺麗な瞳の男の子の顔が...…
その距離わずか10センチ。
もう少しで、
鼻と鼻が当たっちゃいそうなくらい近い!!
目の前の出来事が現実かわからなくて、
私は固まってしまった。
だって、
ビー玉のように透き通った瞳をした男の子が、
私の手首を引き寄せ、
パクリとたこ焼きを食べたから。
「な……七星……くん……?」
至近距離でたこ焼きをほおばっていたのは、
栗色の髪をなびかせた、美少年。
同じクラスの七星(ななせ)くんだった。