白雪姫に極甘な毒リンゴを

 次の日。

 あっという間に、
 学校から帰る時間になりました。


 明日はいよいよテストです。


 今日こそは、
 早く帰って勉強をしなきゃな。


 そう思って窓際の席に座り、
 帰る支度をしていると、
 廊下から女子たちの黄色い声が。


 もしかして……

 また紫音くんが一緒に帰ろうって
 来てくれたのかな?


 お兄ちゃん目当てで
 私に近づいてきたのがバレバレな紫音くん。


 でも、お兄ちゃんの愚痴は聞いてくれるし、
 お兄ちゃんにこき使われている
 辛さもわかってくれる。


 この、女友達みたいな関係がいいの。


 あ、女友達みたいなんて言い方をしたら、
 紫音くん嫌がるよね。


 本人の前で言わないように
 気を付けなくちゃ。


 黄色い声が
 だんだん大きくなったと思ったら、
 一人の男子が教室のドアに手をついた。


 紫音くん……じゃなく……


 お……お兄ちゃん??



 どうしたんだろ?


 お兄ちゃんが私のクラスに来ることなんて、
 今まで一度もなかった。


 それは多分、
 地味で暗い私なんかが妹だってことが、
 恥ずかしいからだと思う。


 お兄ちゃんと目が合ったちょうどその時、
 髪を揺らした女の子が、
 お兄ちゃんに話しかけた。


「一颯せんぱ~い!
 この前は、ごちそうさまでした」

 
 クリクリしたお目めで、
 飛び切りの笑顔をつくって話しかけたのは、
 クルミちゃんだった。


 お兄ちゃん、
 クルミちゃんに用があったんだ。


「また、一颯先輩のお家に、
 遊びに行かせてくださいね。

 インコの小雪ちゃんにも会いたいし」


 周りの女子たちが、
 羨ましい!!っていう目で
 クルミちゃんを見ている。


 お兄ちゃんだって、
 穏やかな笑顔で
 クルミちゃんに微笑んでいるし。


 も……もしかして……


 お兄ちゃんの好きな相手って……


 クルミちゃん??

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