白雪姫に極甘な毒リンゴを

 お兄ちゃんがちょっとだけ
 私に優しくなったのって、
 お誕生会の後だよね?


 美少女のクルミちゃんがお家に来たから、
 好きになっちゃったのかな?


 いくら鈍い私でも、気づいてしまった。


 それって……


 七星くんとお兄ちゃんが、
 恋のライバルってことだ。



 七星くん、
 クルミちゃんがお兄ちゃんと
 楽しそうに話していて、
 辛い思いしてないかな?


 そう思って七星くんを見ると、
 切なそうな顔の七星くんと目が合った。


 こ……これは……


 私に助けを求めているのかな?



 お兄ちゃんを、
 クルミちゃんに近づけないでって。



 七星くんが本気で、
 クルミちゃんを好きって思いが伝わってきて、
 自分の胸がギューっと締め付けらる。


 その時


「六花、帰るぞ!」


 ん? 

 私? 

 呼ばれていますか?



 お兄ちゃんはズカズカ教室に入ってきて、
 窓際の私の前まで来た。
 

「早く、帰る支度しろよ。
 テスト勉強する時間、なくなるだろ?」


 私は急いで、
 カバンの中に教科書や筆箱をつめこむ


「一緒に……帰るの?」


 私の問いかけに、目をキリッとつり上げた。


「なんか文句でもあんのかよ?」


 ひえ~


 さっきまで、
 クルミちゃんにあんな優しい笑顔を
 向けていたのに、
 私への態度、違いすぎだよ!!


 それに文句は……ないですよ……


 ただただ……


 今まで学校で、
 話しかけるなって私を拒絶していたのに、
 どうしちゃったのかなって思っただけです。


「家に着くまで、
 英語の問題だすから、解き続けろよな。

 お風呂と夕飯以外、
 全部英語の勉強をさせるから、
 覚悟しとけよ」


 あまりの威圧感に、
 素直にうなずくことしかできない。


 明日から始まる、1学期の期末テスト。


 英語は2日目だから、
 違う科目の勉強をする予定だったのに、
 そっちも赤点になっちゃうよ。


 帰る支度が出来て、
 お兄ちゃんと教室を出た。


 すれ違う女子たちの、 
 お兄ちゃんに向けるピンクの視線。


 一緒にいると、
 本当にお兄ちゃんって
 女子にモテるんだなって実感する。


 そんな人気者の隣にいたら、
 ダサい自分がみじめに感じて、
 お兄ちゃんの1歩後ろを歩いた。

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