白雪姫に極甘な毒リンゴを
☆一颯side☆

「は~ 
 今日もたくさん売ったよな。ジェラート」


 バイトが終わり、
 十環とロッカールームで
 着替えをしているところ。


「一颯ファンの子、多いからね。

 って言っても、今日の指名の数は、
 俺の方が多かったけどね」


 年中ニコニコ微笑んでいる十環は、
 優しい笑顔で、俺の突っ込まれたくない
 ところをつついてくる。
 

「あれ? 一颯?

 いつもだったら、
 『次は絶対に勝つ!』とか言うくせに、
 今日はどうしちゃったのかな?

 もしかして……」


 十環がニヤリと俺を見た。


「な……なんだよ! 変な目で見んなよ!」


「一颯くん、
 りっちゃんに会えたのが嬉しかったのかな?

 お揃いのキーホルダー、
 もらっちゃったみたいだし」


 ん~ あ~ もう!!


 十環に隠すのはムリだ。


 アイツは俺が隠そうとしても、
 俺が白状するまで問い詰める。


 善人ぶった笑顔の裏に、
 悪魔が宿っているんじゃないかって
 思う時があるくらい。


「あ~ そうだよ!

 だって六花の奴、
『勉強を教えてくれたお礼』とか言ったんだぜ。

 可愛すぎて、ずっげービビった」


「俺としては意外だったな?」


「は? 何が意外なんだよ?」


 六花が俺のバイト先に来たことか?


 俺を嫌いな六花が、
 よく来たなとは思うけど……


「一颯がキレなかったこと。
 それって、バイト中だったから?」


 十環の言っている意味がよくわかんねえ。


 あんなかわいい六花が、
 俺のバイト姿を見に来てくれたんだぜ。


 怒る要素なんて一つもなくねぇ?


「なんでキレなきゃいけねえんだよ。六花に」


「だってさ、
 イケメン君とデートしていたわけでしょ? 
 六花ちゃん」


「で……デート?」
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