白雪姫に極甘な毒リンゴを
自分で自分の脳に聞いてみる。
あれって、
デートをしていたように見えたか?
見えねえよな?
なぜか今だけ楽天的な脳みそが、
『六花はデートをしていたわけじゃない』と
判断した。
「だって、一緒にお買い物して、
ジェラート食べて。
近くの席に座っていたおばあちゃんも、
『かわいいカップルね』って、
ほほえましく見ていたよ。
六花ちゃんと紫音くんのこと」
そのおばあちゃんの目が、
おかしいだけだろ。
お年を召されて、
はっきり見えてなかったんじゃねえの?
俺なんて両目の視力が2.0。
信じるのは
人生経験が多いおばあちゃんより、
自分の視力。
「紫音にとって興味があるのは、俺だから。
六花のことは、
俺に近づく道具にすぎないんだって」
「何それ? どこからの情報?」
「いつも俺の周りにいる、女子たち情報。
あの子たちさ、
俺がぽろっと言うと
調べてきてくれるんだよな。
紫音の奴さ、
俺に憧れだしてから、
俺の妹がどんな子か知りたくて、
六花を見に行ったんだって。
その時、六花を見てなんて言ったと思う?」
「かわいい、とか?」
「それは十環が、
女の子を見た時のリアクションだろ?
全然違う。
むしろ真逆。
『一ミリもかわいくない、ガッカリ』だぜ。
紫音を好きな女子たちも、
紫音が六花に話しかけるのは
俺目当てってみんなわかってるみたいでさ、
六花に嫉妬しないんだって。
しかも、バスケ部のマネージャーと
いい感じみたいだし。
な、今日のは絶対に
デートじゃないって思うだろ」
説得力がありすぎたかなと思ったのに、
隣の十環は、まだ納得していない感じ。
ま、いいや。
十環にわかってもらえなくても。
でも……
十環に聞いてもらいたい話もある。
できれば、
俺の気持ちを理解して欲しいと思う話が。