オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
コーヒーを飲んで一息ついている蓮人に改め

てお礼を伝える。

「どういたしまして。」

たった一言。だけど、その短い言葉にどれだ

けの優しさが詰まっているか、私は知ってい

る。

「そろそろ帰ろうか。」

「うん。」

おしゃれなカフェも、楽しいデートも名残惜

しく思いながら、満月が照らす道を歩き出し

た。

「ちょっと待ってて。」

お手洗いに行った蓮人を、駅のベンチで待っ

ていた。

「ねぇキミ。一人?」

「へっ?」

突然声を掛けられて、横を見ると下心丸出し

の目で見降ろされていた。

「オレがいいコト、してあげる。」

前の私なら怯えて助けを待つだけだったけ

ど、なぜか今は怖くない。

「大好きな彼と来てるので、ごめんなさ

い。」

きっぱりと断り、立ち上がった瞬間。

「きゃっ!」

強い力で腕を掴まれて、引き留められてしま

う。怯んじゃだめ。

「彼より楽しいデート、保障するよ?」

き、気持ち悪い…。

「だいたいそんなにかっこいい彼じゃないで

しょ?こんなに可愛いのにもったいない。」

な、何言ってるの?この人。

「キミ、彼じゃ満足してなさそうだし…」

「いい加減にしてください。」

私は言いたい放題の馬鹿男の言葉を遮って、

一蹴した。

蓮人より楽しいデート?蓮人がかっこよくな

い?蓮人に私がもったいない?

「あなたの仰ること、全部逆ですよ。」
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