オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
現実は先生に残酷だった。

「彼は父親にはならないと言って、私の前か

ら消えた。」

オレはただ黙って聞くことしかできなかっ

た。自分の父親がそんな奴だなんて、信じら

れなくて。

「それでも、みやびたちを見てたから、降ろ

そうとは思わなかった。あなたを幸せにしよ

うと決めてた。あなたが生まれるまで。」

自分のお腹を痛めても愛していこうと、幸せ

にしようと決めて産んだ赤ん坊は、皮肉にも

父親にそっくりだった。

「それからはもう、想像できるでしょ?」

先生はふぅっと息を吐いて、まるで緊張を解

こうとするようにお茶をすする。

「両親が死んだとき、なぜ父親そっくりのオ

レを、先生の施設で引き取ったんですか?」

違う施設でもよかったはずなのに。

「それがみやびの…あなたの母親の最期の願

いだったからよ。」

父親は病院に運ばれてすぐに死亡確認された

が、母親は一命を取り留めた。

「病院に運ばれて二日後、みやびは急変して

ね。たった一度だけ目を開けて言ったの。蓮

人を守って。お願い。って。」

たった一人の親友の最期の願いは、一度手放

した実の息子を守ること。謎に包まれていた

過去が解けるのと反比例して、オレの思考は

絡まっていく。

「両親が交通事故に遭ったのはオレが4才の

頃って…。先生、もしかして…。」

早織ちゃんはオレの4歳下だ…。

「そうね。私のお腹には赤ちゃんがいた。」
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