オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
甘いココアをテーブルに置いて、隣に座ると

突然抱きしめられた。

「どうしたの?」

やっぱり蓮人、様子が変だ。これから何を話

そうとしてるのかわからないけど、きっと大

事な話なんだ。

「オレの家族の話、聞いてくれる?」

蓮人の家族…。それは私がずっと聞きたかっ

たこと。家族の話をするのは私ばかりだっ

た。不自然なほど蓮人が家族の話をすること

はなかったから。

「うん。」

「多分混乱させると思う。」

蓮人のか細い声で、不安が伝わってくる。

「大丈夫だよ。蓮人と二人なら、乗り越えら

れる。」

蓮人がいるから、私は強くなれる。

蓮人はゆっくりと体を離して、口を開いた。

蓮人の口から語られる過去はあまりにも複雑

で。私が過ごしてきた家族との時間とはかけ

離れていて。蓮人たちがどれだけ苦しみに耐

えて生きてきたのか、想像するだけで息が詰

まった。

蓮人が全てを語り終えると、私は涙を流して

いた。

「もも…。」

蓮人の長い指が優しく目尻の涙を掬ってくれ

る。

「話してくれてありがとう。」

涙を拭ってくれた蓮人の大きな手を上から包

み込むように触れる。

「ももに重いもの背負わせることになってご

めん。」

「謝らないで?話してくれたのが嬉しいの。

また一つ蓮人のこと、大好きな人のこと知れ

て嬉しいの。」

蓮人がこれまで抱えてきた痛み、葛藤、迷い

を全てこの手で抱きしめたい。
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