オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
味見をするときは。

「美味しい!」

「オレにも味見させて。」

キスで味見なんて…ずるい…。

食器を洗うときは。

「オレがやるよ。」

「私にさせて?」

「じゃあオレの役目はこうだな。」

後ろから抱きしめるのが役目なの…?これ

じゃ心臓持たないよ…。

いつにもまして甘々な時間があっという間に

過ぎていく。

外はもう日が沈んで、蓮人の誕生日の終わり

が近づいていた。

「蓮人。もう一つプレゼントがあるの。」

蓮人がリビングを離れている隙にこっそり冷

蔵庫に閉まっていた小さな箱を取り出した。

「これ、なに?」

蓮人がゆっくりと開けた箱の中には、手作り

のカップケーキ。

私たちが付き合い始めた文化祭で美味しそう

に食べてくれた思い出は、私の宝物なの。

「文化祭で出したケーキは、龍也さんに手伝

ってもらったけど、今回は自分で考えて作っ

てみたの。」

このケーキは、蓮人のことを想って、蓮人の

ためだけに作った。美味しいって言ってもら

えるかな…。

「ん、美味い。」

蓮人は一口かじると、笑みを浮かべた。

「よかった~!」

蓮人はあの日と同じようにケーキを食べ進め

て、あっという間に完食してしまった。

「このケーキは誰も食べてないの?」

「食べてないよ?」

「龍也も食ってないの?」

「うん。」

私は文化祭の時の会話を思い出して、くすぐ

ったい気持ちになった。
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