オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
「忘れ物ない?」

「うんっ!」

待ちに待った江の島新婚旅行。

蓮人の運転で車を走らせて、あっという間に

目的の温泉宿に着いた。

受付を終えて、部屋に案内されると。

「うわー!広いっ!」

海を一望できる大きな窓、ふかふかのベッ

ド、石造りの露天風呂。

「後で一緒に入ろうな。」

「も、もうっ!」

露天風呂を見ていた私の耳元で意地悪く囁か

れて、顔が真っ赤に染まっていく。

それから私たちは温泉街を歩いて、みんなへ

のお土産を買ったり、江の島名物を食べ歩き

したりした。

気が付けば、空が傾き始めていた。

「もも。こっち。」

「どこ行くの?」

蓮人に腕を引かれるままついていくと、その

先には幻想的な世界が広がっていた。

「きれい…。」

限りなく続く水平線の向こうにオレンジ色の

の夕日が沈んでいく。こんな景色、見たこと

ない。

「なんだか、夢みたい。」

「夢じゃねぇよ。ほら。」

後ろから蓮人の温もりに、蓮人の匂いに包ま

れて、この瞬間が現実であることを教えられ

る。

「蓮人…綺麗だね。」

「そうだな。」

夕陽が照らす夏の砂浜で、私たちはどちらか

らともなくキスをする。

触れた場所から伝わってくる。蓮人の鼓動

が。蓮人の温もりが。蓮人の気持ちが。

私の鼓動も伝わってるといいな。

「来年結婚式あげたら、今度は海外に新婚旅

行行こっか。」

「また新婚旅行するの?」
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