オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
いざ一人になると寂しくて。

お父さんが組み立ててくれたベッド。

お母さんが選んでくれたカーテン。

部屋をぐるっと見渡すと、お父さんとお母さ

んの優しさで溢れていた。

言葉にできない感情がこみ上げてくる。思わ

ず零れだした涙を一粒すくって、一歩踏み出

した。

「散歩、してこようかな。」

部屋を出ると、真っ青な空がどこまでも広が

っていて、下を見下ろせば公園で子供たちが

笑っている。

近所まで歩いてみると、コンビニやドラッグ

ストアがあって、小さなお蕎麦屋さんもあっ

た。

そろそろ帰ろうと思ったとき、細い路地を見

つけた。引き寄せられるように路地に入ると

おしゃれなエントランスが印象的なカフェに

たどり着く。

「秘密基地みたい。」

それからどれくらいその場で立っていたんだ

ろう。

次の日からは、入学早々に行われる学力テス

トに向けた勉強を始めた。

お父さんとお母さんの反対を押し切って東京

の高校に受かったんだもん。絶対にいい成績

とってやる!!

気合充分!お父さんとの賭けに勝った模試で

も8位だったし。ちゃんと勉強すればきっと

大丈夫!

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうござい

ます。」

こじんまりとした部屋で一人勉強する時間は

信じられないほど長く感じたが、ようやく学 

校が始まった。
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