オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
もう少し寝かせてやろう。

オレは布団をかけなおすと、キッチンで野菜

スープを作り始めた。

意外と料理ができるのは施設で先生にめちゃ

くちゃ教え込まれたため。

和食を何品か作って、7時に起こそうと思い

寝室のドアを開けると、彼女は起きて、まる

で世界の終わりが来たかのような顔をしてい

る。

「起きたか?」

オレの存在に気付かない彼女に声をかける。

「だれ?」

誰って…。こいつまさか、何も覚えてない

のか?

彼女に昨日起きたことを説明すると、パッと

表情が明るくなった。

表情ころころ変わりすぎだろ。

施設育ちのせいで女と話すのは苦手だけど、

なんかこいつは面白くて普通に話せる。

オレが作った朝食も美味しそうにペロッと平

らげた。

満足そうな顔の彼女に名前を聞くと、少しだ

け表情が曇ったが、教えてくれた。

彼女はお礼を言って、学校に行くと言って颯

爽と部屋を出ていった。

「白河もも…。」

あいつの寝顔や声、匂い、しぐさ…。

全部がオレの脳裏に焼きついて消えない。

心臓がうるさく騒いで、自分の意志じゃ抑え

られない。

まさか、なんか変な病気か…?

「なんだよ、これ…。」

オレはいつも行くカフェに向かった。

「いらっしゃい…って蓮人か。」

行きつけのカフェでバイトをしている龍也は

今じゃ「店員と客」ではなく、「友人」だ。
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