オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
見上げると、暗闇でもわかる蓮人さんの美し

い横顔。

こんなにかっこよかったっけ…。

速いテンポで刻む鼓動に違和感を感じながら

も、蓮人さんの手を離せずにいた。

とはいえ、私のホラー嫌いは底知れず…。

「お前、うるさすぎ。」

お化け屋敷を出たころには、蓮人さんも呆れ

るほど。

「だって、ここ怖すぎるんだもん!」

初めからお化けは嫌いって言ってたし。

蓮人さんが半強制的に連れて行ったくせに、

私に文句を言うなんてひどい。

「お化けよりももの方が怖かった。」

「なっ!」

なんて失礼な…!

「無理やり連れて行ったくせに!」

この人、優しくて、かっこよくて、大人だけ

ど。意地悪すぎる。

「でも、オレが手繋いでやったから大丈夫だ

っただろ?」

その言葉を合図に繋がれた手を見ると、俗に

言う「恋人繋ぎ」をしていた。

う、嘘…。

「あの、ありがとうございました…。」

咄嗟に手をほどいてしまったのは、脳裏に龍

也さんが浮かんだから。

あんなに真剣に想いを伝えてくれたのに、蓮

人さんとデートして、恋人繋ぎまでしちゃう

なんて。

「もも…?」

蓮人さんの不安そうな声に、我に返る。

「あ、もう夕方ですね。そろそろ帰らないと

ですね!」

遊園地の真ん中に立つ大きな柱時計は17時

を指していた。

何事もなかったかのようにいつものように笑

って見せたのに。
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