オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
それなのに。

「お前、ももちゃんのこと好きじゃねぇの

か?」

「好きじゃねぇよ。」

なんで。お前の中で何があったんだよ。

めったに感情を表に出すことのない蓮人が、

顔を赤くしたり、ももちゃんに優しく笑いか

けたり、楽しそうだったはずなのに。

「お前、オレに気遣ってるとかじゃないよ

な。」

だとしたらオレは蓮人を許さない。そんな奴

にももちゃんは絶対に渡さない。

「おはようございます!」

胸の奥で怒りが湧き始めた瞬間に、入り口か

ら、ももちゃんが入ってきた。

ももちゃんが心配するようなことがあっちゃ

いけない。

「おはよう!今日もよろしくね。」

いつも通りももちゃんに挨拶をする。

ももちゃんが裏で着替えている間に、蓮人は

帰ってしまった。

それから蓮人は店に来なくなり、連絡も来な

くなった。

「ももちゃん、最近蓮人に会ってる?」

あの日から、2週間ほどが経った頃、ももち

ゃんに聞いてみるが。

「会ってないです…。」

そう答えるももちゃんの声は、今にも消えて

しまいそうなくらいか細かった。

ももちゃんは一生懸命笑いかけてくれたけ

ど、オレは気づいてしまった。

ももちゃんが好きなのはオレじゃない。

蓮人なんだ。

「龍也さん、閉店後お話いいですか?」

振られるんだ。ももちゃんはオレの隣よりも

蓮人の隣の方が幸せなんだ。

閉店まであと2時間。
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