オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
実は、このカフェのメニューの中には、オレ

が作ったケーキがあり、得意分野ということ

なのだ。

「次の休み、一緒にケーキ考えよっか。」

迎えた土曜日。

オレはももちゃんと向かい合って真剣にどん

なケーキがいいか話し合った。

「一回これで作ってみる?」

二人で2時間くらい悩んでレシピが完成し

た。

ももちゃんと材料の買い出しに向かっている

と、隣を歩くももちゃんの足が突然止まっ

た。ももちゃんが向ける視線の先には。

「蓮人…。」

なんでこんな時に。

オレはいい。

ももちゃんの気持ちはどうなるんだよ。

蓮人は何も言わずにオレ達の横を通り過ぎ

た。

涙を溜めて俯くももちゃんを、オレはただ抱

きしめた。

でも、オレは気づいていたんだ。

蓮人が通り過ぎるとき、強く手を握りしめて

いたのを。何かを我慢したり、自分の気持ち

を閉じ込めようとするときの蓮人の癖。

オレはどうしたらいいんだ。

「龍也さん、ごめんなさい。もう大丈夫で

す。」

ももちゃんはそう言って、オレの腕から離れ

る。

ももちゃんは買い物中もずっと笑いかけてく

れる。蓮人のことを考えないようにしている

のだろう。

「これぐらいでいいかな。」

買い物が終わって、カフェへの帰り道。

「龍也さん、何から何までありがとうござい

ます!」

お礼を言うももちゃんの手を優しく握る。
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