オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
「え?」

それってどういうこと?

先生に訊ねようとしたけど、「がんばれよ」

とだけ言って、廊下の角を曲がってしまっ

た。

確かに蓮人さんはほとんど毎日校門に迎え

に来てくれてた。

私が足をケガした時も、すぐに会いに来て

くれた。

大きな手で何度も優しく頭を撫でてくれ

た。

「あ…。」

気付いた時には、一粒雫を零していた。

だめ。今は目の前にある自分の仕事に集中す

るの。それで、文化祭が終わったら、蓮人さ

んに会いに行く。それまでは、絶対に泣かな

い。

それから2週間、文化祭の準備は忙しくも楽

しくて、気づけば文化祭前日を迎えていた。

「ももちゃん!今日一緒に龍也さんのところ

行こうよ!」

しばらくバイトも休んでいたし。

「こんにちは!」

私は久しぶりに、聖菜と玲悟くんとカフェに

来た。

「みんな、いらっしゃい。」

カウンター席に並んで座ると。

「龍也さん!文化祭来てくれるんですよ

ね!」

聖菜はカウンターから身を乗り出して、嬉し

そうに目をキラキラさせる。

「聖菜、危ないぞ。」

玲悟くんが聖菜の腕を引いて、座らせる。

「うん、いくよ。みんなが頑張って作った文

化祭、楽しみにしてるよ。」

優しい声で答えてくれる龍也さんに、胸が痛

む。

私は明日、こんなに優しい人を傷つけること

になるんだ。この人を好きになれたら。
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