オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
でも、あの黒いパーカー…。

それに廊下の奥の方が騒がしい。

まるで校門で私を待っていた時みたいに。

気付いた時にはすでに私の体は動いていて。

見間違いかもしれない。

本当に蓮人さんだったとして、傷つくかもし

れない。

それでも伝えたいの。「好き」って。

私はただ、蓮人さんが見えた方へひたすら走

った。龍也さんが私の名前を呼んだことにも

気付かずに。

蓮人さんを見失ってからも校内を駆け回った

けど、結局見つからなくて。

「いるわけないよね…。」

私の声はあまりにも小さく、お祭り騒ぎの校

舎に消えていった。

「おい、もも!」

後ろから声をかけられて振り返ると、そこに

は玲悟くんがいた。

「どしたの?そんなに慌てて。」

玲悟くんの額には汗が滲んでいて何か焦って

いるように見える。

「聖菜がいないんだ。」

「え!?」

聖菜は教室にいるんじゃ…?

「トイレに行くって言ったっきり戻ってこな

いらしい…。」

玲悟くんの言葉に血の気が引いていくのがわ

かる。このまま棒立ちしてるわけにはいかな

い。とにかく手がかりを…。

「ももちゃん!」

悩んでいると、龍也さんの声が聞こえてき

た。

蓮人さんのこと追いかけて、龍也さんのこと

置いていっちゃったんだ…。

「あの…。」

「龍也さん!聖菜を探すの手伝ってくださ

い!」

玲悟くんが必死に龍也さんに頭を下げる。
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