オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
いつもよくいなくなる聖菜だけど、オレはそ

の度に見つけた。

「いい加減…。」

いなくなんなよな…。

駆ける足に想いを乗せる。

グラウンドに出たオレは、その静けさに嫌な

予感がした。

ゆっくりとグラウンドに足を踏み入れると、

人が近づく気配がして、その瞬間。

「おい、お前。こんなところで何してん

だ?」

背後から聞こえた声は明らかに悪意がこもっ

ていて、一瞬で聖菜が捕まっていると察し

た。

「お兄さんたちこそ、ここで何してるんです

か?」

オレは蓮人さんや龍也さんみたいに体が大き

いわけじゃない。力があるわけでもない。

だけど、オレには聖菜がいる。そして、よく

回転してくれる頭もある。

ここからは言葉で相手を騙すしかない。

「もうすぐグラウンド整備が始まるそうなの

で先生から人がいないのを確認してほしいと

頼まれまして。」

「こんなお祭りの日にか?」

オレの言葉を疑うガラの悪いお兄さんたち。

「こういう日だからこそするんですよ。」

「は?」

「文化祭の2日間は全部活動は休みなので、

無駄に休まなくて済むって野球部のコーチ

が…。」

頼むから騙されてくれ…!

「そっか。ありがとな。」

一番背が高い奴が一言告げて、体育館の方に

歩いて行った。

騙されてくれた…?お兄さんたちが体育館に

入ったのを確認して、すぐにグラウンドの倉

庫に走り出す。
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