オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
「大人を甘く見ちゃいけないよ?」

後ろを振り返ると、ももがホストみたいな男

に捕まり、ナイフを突き付けられていた。

「ももちゃんっ!」

もものもとに駆け寄ろうとする聖菜をオレは

力いっぱい止めた。

「こっちの女も結構可愛いから、こっち食べ

ようよ。」

どうしたらいい…。極めて不利な状況で、も

もを助ける方法は…。

「かわいいよなー。」

その言葉がグラウンドに響いた瞬間、痛々し

い音が地面に叩きつけられて、砂埃が舞う。

その光景に見入っている間に、ナイフを持っ

た腕を蹴り上げて、また地面に叩きつけた。

「すごいコンビプレーだな…。」

龍也さんはももを囲む男たちを制して、それ

に気を取られていたホスト男を蓮人さんが蹴

り上げるなんて…。

「ほんと、ももちゃんのこと好きなんだ

ね。」

聖菜はオレの隣に立って、少し呆れたかのよ

うに呟く。

「そうだな…。って!聖菜!大丈夫か?」

のんきにももたちを見てる場合じゃねぇよ。

オレは聖菜に向きなおり、傷がないか確かめ

た。

「うん。何にもされてないから…。」

俯いて答える聖菜の肩は震えていて、グラウ

ンドの土に雨とは違う雫が染みていく。

「聖菜…。」

オレやももに心配かけまいと涙を隠そうとす

る健気な聖菜を愛しく思う。震える小さな体

をそっと抱きしめて。

「よく頑張りました。もう泣いていいぞ。」
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