オオカミ様VS王子様 ~私を賭けたラブゲーム~
それに、蓮人さんは文化祭に呼んでない。

「なんとなくお前が呼んでる気がした。」

蓮人さんはごまかすように意地悪く笑ったけ

ど。

私はもう逃げたくない。初めて抱いたこの気

持ちを中途半端にしたくない。

「蓮人さん、私のこと嫌いになりました

か?」

「は…?」

蓮人さんは目を見開いて、私と視線を重ね

る。

いつも意地悪してくるし、何考えてるか全然

わからないし…。なのに、いつも助けてくれ

るのは蓮人さんで、いつも隣を歩いていたの

も蓮人さんで。

あんなに甘い思い出だけ残して「好きじゃな

い」なんてひどいよ…。

「私は蓮人さんのこともっと知りたいのに。

やっと自分の気持ちに気付けたのに。」

言葉と一緒に蓮人さんへの気持ちが涙となっ

て溢れ出す。

「蓮人さんの気持ちがわからないです…。」

違う…。こんな風に言いたかったわけじゃな

い…。蓮人さんのことが。

私はただ…。

「蓮人さんのことが好きです。」

蓮人さんの綺麗な瞳が、優しい色に変わると

蓮人さんの腕の中に閉じ込められた。

まるで宝物を扱うような優しい温もり。

「好きに決まってんだろ。」

「え?」

耳元で響く声は確かに蓮人さんのもので。

どういうこと…?だって好きじゃないって龍

也さんに話してたのに…。

私の疑問をかき消すように、蓮人さんの腕に

力がこもる。

「ももが好きだ。」
< 89 / 185 >

この作品をシェア

pagetop