上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜

「そうじゃないでしょ？それは言い訳ってものよ。しおりの友好関係って、私を除いて大学生の頃で止まっているのよ」

明日香の言葉に、胸がズキリと痛んだ。事実なだけに、言い返すこともできない。
学生の頃のあの出来事以来、私は人と深く付き合うことを避けてきた。それは、意識的にと言うよりも本能的なものかもしれない。
その私の頑なな部分を、いとも簡単に蹴散らしながら近付いてきたのが、明日香だった。

「言いすぎてるかもしれないけど、私、しおりは一番の親友だと思っている。だからこそ、言わずにはいられないの」

「うん。わかってる。ありがとう。私にとっても、明日香は一番の……ううん。唯一の親友よ」

「まあ、でもさあ。いろいろ噂を耳にしてるわよ。今日はしおりの部屋で女子会よ。楽しみだ」

微妙な空気を、一瞬で吹き飛ばすような明日香の悪い笑みに、私の心中はまた違った微妙な空気に包まれていた。