初めての to be continued…
「ごめんねー、ありがとー」
声の主が現れた。
「手がすべっちゃって」
にこにこと、全く悪びれていない。
その人は、先輩が集めた書類を受け取ろうと、手を差し出した。
「ごめんね、じゃねーよ。一体なんなんだ」
「だから、手がすべったんだって」
先輩は、口調はキツいけど、ちゃんと書類を渡している。
仲が悪い訳ではなさそうだ。むしろ、いい方。
気心が知れてるからこその乱暴な口調らしい。
「手がすべって、俺だけに当たったのかよ!」
「手がすべったのは本当。裏紙だけを落とすはずが、『手がすべって』私のレポートも一緒に落としちゃったのよ。それにしても、きれーに嶋田だけに当たったね。良かった、知らない人に迷惑かけなくて」
「ふざけんな!」
「ふざけてるのはお前だ、嶋田!」
別の声が飛んできた。
そっちを見ると、ロングヘアの綺麗な女性が、怒りの形相で先輩をにらんでいる。
先輩は『ひっ』と息を吸い込んだ。
「お、岡部先生」
この女性のことは知っている。
学内で抜群の人気を誇る、岡部莉子教授だ。
才色兼備とはこの人のためにある言葉だと言っても過言ではなく、その美しさに魅了されない者はいないという。
初めて見たけど、確かに綺麗な人だ。綺麗な人が怒っていると、凄く怖い。
逃げようとする先輩の腕を、さっきの声の主がガシッとつかむ。
先輩の顔が、恐怖で歪んだ。
「坂下、お前」
「岡部先生にレポートを出しに行ったら、窓の外から嶋田のでっかい声が聞こえてね。先生は電話中でさ、なんとかつかまえておけって頼まれちゃって。ここ、岡部ゼミの真下だよ。知ってた?」
声の主はにこにこして、でも先輩をがっちりつかまえている。怖い。
その間に、岡部教授はどんどん近付いてきた。
「私の朝からの呼び出しを無視するとはいい根性だ、嶋田」
「あ、あの、すみません」
カッカッとヒールのかかとを鳴らして、岡部教授は嶋田先輩のところまできた。
女性にしては背が高いのだが、それ以上に雰囲気で圧倒される。
岡部教授は焦っている嶋田先輩の胸倉をつかみ、グイと引っ張って、元来た道を歩いていく。
「先生苦しい!」
「うるさい、お前の提出物がたまりまくってるんだ。今日中に全部片付けてもらうぞ」
「うええマジっすか!」
近くの通用口から校舎に入ろうとしたところで、岡部教授はこっちを振り向いた。
「坂下、助かった。これは借りにしといてやる。有効に使えよ。レポートは、それを順番に揃えて提出。多少汚れてても構わない」
ニッと笑った。美人は何をしても美人だ。
「ありがとうございまーす」
俺の隣にいる声の主が、のんきに返事をする。
岡部教授は、そのまま嶋田先輩を引きずって校舎に消えた。
声の主が現れた。
「手がすべっちゃって」
にこにこと、全く悪びれていない。
その人は、先輩が集めた書類を受け取ろうと、手を差し出した。
「ごめんね、じゃねーよ。一体なんなんだ」
「だから、手がすべったんだって」
先輩は、口調はキツいけど、ちゃんと書類を渡している。
仲が悪い訳ではなさそうだ。むしろ、いい方。
気心が知れてるからこその乱暴な口調らしい。
「手がすべって、俺だけに当たったのかよ!」
「手がすべったのは本当。裏紙だけを落とすはずが、『手がすべって』私のレポートも一緒に落としちゃったのよ。それにしても、きれーに嶋田だけに当たったね。良かった、知らない人に迷惑かけなくて」
「ふざけんな!」
「ふざけてるのはお前だ、嶋田!」
別の声が飛んできた。
そっちを見ると、ロングヘアの綺麗な女性が、怒りの形相で先輩をにらんでいる。
先輩は『ひっ』と息を吸い込んだ。
「お、岡部先生」
この女性のことは知っている。
学内で抜群の人気を誇る、岡部莉子教授だ。
才色兼備とはこの人のためにある言葉だと言っても過言ではなく、その美しさに魅了されない者はいないという。
初めて見たけど、確かに綺麗な人だ。綺麗な人が怒っていると、凄く怖い。
逃げようとする先輩の腕を、さっきの声の主がガシッとつかむ。
先輩の顔が、恐怖で歪んだ。
「坂下、お前」
「岡部先生にレポートを出しに行ったら、窓の外から嶋田のでっかい声が聞こえてね。先生は電話中でさ、なんとかつかまえておけって頼まれちゃって。ここ、岡部ゼミの真下だよ。知ってた?」
声の主はにこにこして、でも先輩をがっちりつかまえている。怖い。
その間に、岡部教授はどんどん近付いてきた。
「私の朝からの呼び出しを無視するとはいい根性だ、嶋田」
「あ、あの、すみません」
カッカッとヒールのかかとを鳴らして、岡部教授は嶋田先輩のところまできた。
女性にしては背が高いのだが、それ以上に雰囲気で圧倒される。
岡部教授は焦っている嶋田先輩の胸倉をつかみ、グイと引っ張って、元来た道を歩いていく。
「先生苦しい!」
「うるさい、お前の提出物がたまりまくってるんだ。今日中に全部片付けてもらうぞ」
「うええマジっすか!」
近くの通用口から校舎に入ろうとしたところで、岡部教授はこっちを振り向いた。
「坂下、助かった。これは借りにしといてやる。有効に使えよ。レポートは、それを順番に揃えて提出。多少汚れてても構わない」
ニッと笑った。美人は何をしても美人だ。
「ありがとうございまーす」
俺の隣にいる声の主が、のんきに返事をする。
岡部教授は、そのまま嶋田先輩を引きずって校舎に消えた。