初めての to be continued…
「さてと……」
声の主は、まだ落ちている紙を拾い始めた。
俺も、慌てて拾う。
全部拾い終わって、持っている紙の束を、声の主に差し出した。
「あの、ありがとうございました。俺も助かりました」
頭を下げた。
声の主は紙を受け取って、頭を上げた俺の顔を見て。

笑った。

太陽の光のせいか、やたらと眩しかった。
心臓が止まるかと思った。

「嶋田も大分強引だったもんね。でも悪い人じゃないから。しつこくしないように言っておくね」
拾ってくれてありがとう、と、その人は去ろうとする。
「あ、あのっ!」
思わず呼び止めてしまった。話すことなんてなにもないのに。
「……?」
振り返ったその人は、俺が何を言うのか待っている。
俺は、どうしたらいいかわからずに、視線をさまよわせる。
植え込みの陰に、紙を1枚見つけた。
「あの、これっ」
慌てて拾う。
「あ、それ私のレポートだ。ごめんなさい、ありがとう」
多分それは、レポートの表紙。
題名が書いてあって、その下に名前があった。

『3年 坂下芳子』

さんねん、さかした、よしこ。

「ほうこ、です」
一瞬、なにを言われたのかわからずに、その人を見る。

彼女は、また笑った。
太陽は雲に隠れてるのに、やたらと眩しかった。

「今、名前見てたでしょう。よく『よしこ』って読まれるんだけど『ほうこ』って読むの」
彼女は、俺が持っていた紙を受け取った。
「ありがとね」
彼女は、呆けている俺に、笑顔を残して去っていく。

さんねん、さかした、ほうこ。

俺は、忘れないように、口の中でつぶやいた。



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