初めての to be continued…
「雄大、あの、ごめんね。嶋田の話は置いとこう」
「えっ……」
雄大が顔を上げた。
「あの、せっかく、ふ、ふたりで、いるんだから……嶋田の話じゃなくてもいいかなって……」
もし、違っていたらどうしよう。そうじゃなくても、凄く恥ずかしい。
顔を見ながら話していたはずなのに、うつむいてしまう。

「……すいません」
聞こえてきたのは、雄大のかすれた声。
え、と思って顔を上げる。
雄大は不機嫌じゃなくて、落ち込んだ顔をしていた。

初めて、雄大を可愛いと思った。

「すいません……芳子さんに言わせてしまって……」
雄大の顔が、ゆっくりと、段々赤くなってきた。
「あの、俺、さっきから、ちょっと感情の抑えが効かなくて、芳子さんと嶋田先輩は友達で、なにもないってわかってるのに勝手に嫉妬して、なにやってんだって思ったら情けなくなってきちゃって」

 雄大は、いつも穏やかで優しくて、なにかあると手助けしてくれていた。
 怒ったり、感情を荒らげたりすることは滅多になくて、たまに意地悪なことは言うけど、からかい程度で、本気じゃない。
 年上の私の方が見守られているようで、安心感があった。

 その雄大が、こんな風に、自分の気持ちを言ってくれるなんて。

「俺は年下だし、今まで頑張って対等になろうとして大人っぽくしてきたけど、やっぱりまだ大人にはなりきれなくて」

 胸の奥から、なにかが込み上がってくる。
 甘くて、優しくて、あったかい。

「今日はもう舞い上がっちゃって、俺、なにするかわかんないから、芳子さんはもう帰った方がいいんじゃないかって」
「えっ⁈」

 帰る?今、帰った方がいいって言った?

 耳を疑って、雄大を見る。
 雄大は顔を真っ赤にしてうつむいていて、私を見てくれない。
「あの、送っていきますから……」

 一緒にいたい。

 雄大の顔には、そう書いてある気がした。

 また、胸の奥から、さっきと同じものが込み上がってくる。

 それはきっと、愛おしさ。

「だから、今日は……っ⁈」

 自覚した愛おしさは、あふれてきて、我慢できなかった。
 雄大の首に手を回して抱きついた。
 私の勢いに押されて、ぽすん、と雄大の背中が座椅子に沈む。

「ほ、芳子さん……?」
「私も」
「え……?」
 雄大の肩に顔を付けたまま。声がくぐもるけど、恥ずかしくて顔を合わせられない。
「私も、一緒にいたい」
「え……あの、俺は、送っていきますからって」
「ほんとは、一緒にいたいでしょう?」

 お願い、同じ気持ちでいて。

「……私も、一緒にいたい」

 雄大の手が、私の背中に回った。
 力強く、抱きしめてくれる。
 同じだよって言ってるみたいで、嬉しくなった。

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