初めての to be continued…
面倒見がいいのは、知っている。
私が酔っ払った時は、必ず雄大が家まで送り届けてくれて、翌朝起きたら水やらスポーツドリンクやらが側に置いてあるし、液体の胃薬とかインスタントスープがあったこともある。
大学の時も、会社に入ってからも、雄大は周りをよく見ていて、誰のこともさり気なくサポートしている。頼りにする先輩、慕う後輩は、男女問わずたくさんいる。
積極的に話しかけている女の子はよく見かけていた。
よく考えれば、背が高くて、細身のしっかりした体つき。さっぱり顔は目だけがちょっとくりっとしていて、まあイケメンと言えなくもない。清潔感のある短髪に、細いフレームのメガネが似合ってて、笑えばちょっと可愛い、とくれば、モテてもおかしくはないのだ。
「雄大って、身長何センチだったっけ?」
「183ですよ」
「……そんなにあったんだ」
「中学まではちっちゃかったんですけど、高校でいきなり伸びて。足が痛いっていうか、ダルくて、眠れなかったです」
ピピピとタイマーが鳴った。雄大がフライパンのフタを開けると、香ばしい匂いがしてくる。
そういえば、前から雄大は料理するって言っていた。男性の一人暮らしなのにキッチンタイマーがあるくらいだし。道具も揃っているらしい。
仕上げなのか、雄大が何か液体をフライパンに投入した。このいい香りはごま油。メニューは教えてもらってないけど、美味しそうだ。
「今さらですけど、芳子さんがダメなのはレーズンと辛いものですよね。辛いものは、赤いのは多少なら大丈夫。アレルギーはなし」
「よくご存知で」
「他にないですか?実はこれがダメ、とか、苦手、とか」
「んー、セロリかな。あとピーマンは、自分では買わない」
「了解です。じゃあ今日は大丈夫」
お皿を出し始めたので、慌てて立ち上がった。
「私、運ぶ」
「じゃあお願いします」
出されたお皿の上には、ギョーザがたくさんのっていた。
「わ、美味しそう」
思わず顔がほころぶ。ギョーザは大好きだ。
受け取ろうとお皿を持ったけど、雄大がお皿を放してくれない。
「?」
顔を見上げると、ほけっとしていたのが、ハッとして慌て出した。
「あっ、ああ、すいません。あの、運んでください……」
「?……はい」
よくわからないけど、とりあえずギョーザをテーブルに持っていく。
もう作ってあったらしいサラダを冷蔵庫から出して、雄大が持ってきた。
「あとは?ご飯?」
私と雄大は、お酒も飲むけどご飯も食べる、というところで一致していた。飲食のペースは似通っていて、その点の気遣いは不要だった。
「炊いてありますから、食べるなら持ってきますよ」
「じゃあ、ちょっとだけもらおうかな」
「わかりました」
雄大がキッチンに戻るので、他に運ぶものはないかと付いて行った。
ご飯をよそう雄大のすぐ後ろに立つ。
「芳子さんご飯はこれくらいで、うわっ!」
振り向いた雄大に驚かれた。近過ぎたらしい。
「あ、ごめん」
ちょっと下がった。
「大丈夫だよ、それくらいで」
「あ、あ、ああ、じゃあ、これお願いします……」
「はーい」
私の分は受け取って、雄大の分も持っていこうとそのまま待っていると、なぜか雄大が固まっている。
「どうかした?」
「いや、なんで持ってかないのかなって」
「え、雄大のご飯も受け取ろうかなって思って。食べるよね?」
「あ、ああ、そっか。そうですね」
雄大は自分の分をよそい、私に渡す。
「お願いします」
「はい」
茶碗を受け取った。よく見ると、私の分の茶碗は女性向けっぽくピンク色の小さな花柄だ。
「今朝、慌てて買ってきました」
持っている箸も見せてくれる。長いのと少し短めの、二膳の箸。
「これも」
「わざわざ買ってくれたの?」
「1人分しかなかったから。皿はかろうじて2枚あったんですけど、あのサラダのやつも買いました」
照れくさそうに笑う。
ドクン、と胸の中心が痛くなった。
息がうまくできなくなるくらい、胸がうるさい。
動けなくなっていると、雄大が顔を覗き込んだ。
「芳子さん?」
「あ、あの……なんでもない。ありがとね」
恥ずかしくなって、慌てて茶碗をテーブルに置きに行く。
私が酔っ払った時は、必ず雄大が家まで送り届けてくれて、翌朝起きたら水やらスポーツドリンクやらが側に置いてあるし、液体の胃薬とかインスタントスープがあったこともある。
大学の時も、会社に入ってからも、雄大は周りをよく見ていて、誰のこともさり気なくサポートしている。頼りにする先輩、慕う後輩は、男女問わずたくさんいる。
積極的に話しかけている女の子はよく見かけていた。
よく考えれば、背が高くて、細身のしっかりした体つき。さっぱり顔は目だけがちょっとくりっとしていて、まあイケメンと言えなくもない。清潔感のある短髪に、細いフレームのメガネが似合ってて、笑えばちょっと可愛い、とくれば、モテてもおかしくはないのだ。
「雄大って、身長何センチだったっけ?」
「183ですよ」
「……そんなにあったんだ」
「中学まではちっちゃかったんですけど、高校でいきなり伸びて。足が痛いっていうか、ダルくて、眠れなかったです」
ピピピとタイマーが鳴った。雄大がフライパンのフタを開けると、香ばしい匂いがしてくる。
そういえば、前から雄大は料理するって言っていた。男性の一人暮らしなのにキッチンタイマーがあるくらいだし。道具も揃っているらしい。
仕上げなのか、雄大が何か液体をフライパンに投入した。このいい香りはごま油。メニューは教えてもらってないけど、美味しそうだ。
「今さらですけど、芳子さんがダメなのはレーズンと辛いものですよね。辛いものは、赤いのは多少なら大丈夫。アレルギーはなし」
「よくご存知で」
「他にないですか?実はこれがダメ、とか、苦手、とか」
「んー、セロリかな。あとピーマンは、自分では買わない」
「了解です。じゃあ今日は大丈夫」
お皿を出し始めたので、慌てて立ち上がった。
「私、運ぶ」
「じゃあお願いします」
出されたお皿の上には、ギョーザがたくさんのっていた。
「わ、美味しそう」
思わず顔がほころぶ。ギョーザは大好きだ。
受け取ろうとお皿を持ったけど、雄大がお皿を放してくれない。
「?」
顔を見上げると、ほけっとしていたのが、ハッとして慌て出した。
「あっ、ああ、すいません。あの、運んでください……」
「?……はい」
よくわからないけど、とりあえずギョーザをテーブルに持っていく。
もう作ってあったらしいサラダを冷蔵庫から出して、雄大が持ってきた。
「あとは?ご飯?」
私と雄大は、お酒も飲むけどご飯も食べる、というところで一致していた。飲食のペースは似通っていて、その点の気遣いは不要だった。
「炊いてありますから、食べるなら持ってきますよ」
「じゃあ、ちょっとだけもらおうかな」
「わかりました」
雄大がキッチンに戻るので、他に運ぶものはないかと付いて行った。
ご飯をよそう雄大のすぐ後ろに立つ。
「芳子さんご飯はこれくらいで、うわっ!」
振り向いた雄大に驚かれた。近過ぎたらしい。
「あ、ごめん」
ちょっと下がった。
「大丈夫だよ、それくらいで」
「あ、あ、ああ、じゃあ、これお願いします……」
「はーい」
私の分は受け取って、雄大の分も持っていこうとそのまま待っていると、なぜか雄大が固まっている。
「どうかした?」
「いや、なんで持ってかないのかなって」
「え、雄大のご飯も受け取ろうかなって思って。食べるよね?」
「あ、ああ、そっか。そうですね」
雄大は自分の分をよそい、私に渡す。
「お願いします」
「はい」
茶碗を受け取った。よく見ると、私の分の茶碗は女性向けっぽくピンク色の小さな花柄だ。
「今朝、慌てて買ってきました」
持っている箸も見せてくれる。長いのと少し短めの、二膳の箸。
「これも」
「わざわざ買ってくれたの?」
「1人分しかなかったから。皿はかろうじて2枚あったんですけど、あのサラダのやつも買いました」
照れくさそうに笑う。
ドクン、と胸の中心が痛くなった。
息がうまくできなくなるくらい、胸がうるさい。
動けなくなっていると、雄大が顔を覗き込んだ。
「芳子さん?」
「あ、あの……なんでもない。ありがとね」
恥ずかしくなって、慌てて茶碗をテーブルに置きに行く。