初めての to be continued…
2. 雄大
芳子さんが、初めて家に来た。
家と言っても一人暮らしのマンションの1室。そう広くない部屋に入って、芳子さんは緊張しているみたいだった。
リラックスしてほしくて、とりあえずビールをすすめてみる。
いつも俺が座っている座椅子に、ちょこんと座ってビールを飲む芳子さん。
最近、仕事が忙しくて疲れてるみたいだったので、外よりゆっくりできるかと思ったのだ。
今までは、ただの後輩だったから、家に誘うなんてできなかった。
ひと月前に勢いで告白してしまい、一週間後にもらった返事は『特別』。
しかも、芳子さんが、俺と話していた同期の女の子にヤキモチを妬いてくれていたことがわかり、やっと一歩前進してもいいんだと、仕事が一段落した時期を見計らって、勇気を出して誘ってみたのだった。
芳子さんはすんなりOKしてくれたけど、恋愛方面には本当に疎い人だから、一人暮らしの男の部屋に入ることがどういうことなのか、よくわかっていないに違いない。
そもそもそれがわかっていたら、飲み会であんなに酔っ払わない、か。
普段の芳子さんは、しっかりしていて仕事もできる優秀な人だ。上司の信頼もあり、後輩にも厳しく優しい。男女問わずだけど、どちらかといえば女性の方に人気があった。嫌味なく、誰にでも公平に接する。そりゃあ頼りにされるよな、と思う。
周りへの気遣いもきちんとできて、やわらかい雰囲気を醸し出す。
そんな芳子さんは、酔うとふにゃふにゃになる。
しゃべり方はゆっくりで、目はとろんとし、ぐだくだになって、甘え出すのだ。
普段がしっかりしているだけに、このギャップにやられる男は後を絶たない。
大学時代、飲み会の帰りには、次に行こうと誘う男達をにらみつけながら、芳子さんを無事に送り届けるのが習慣になった。
俺が大学を卒業して、同じ会社に就職するまでの2年間、会社の飲み会があると誰かに持ち帰られるんじゃないかととにかく心配だったけど、元来結構な人見知りらしい芳子さんは「緊張するからさ〜」とあまり酔わなかった。
ところが、俺が入社して、一緒に飲み会に参加するようになると、また酔っ払い始めた。
ただでさえ好感度が高い芳子さんが酔っ払った姿は、やっぱり男を引きつける。
俺はまた、芳子さんに寄ってくる男どもを蹴散らして、無事に送り届ける役目を続けた。
芳子さんは「雄大がいると、安心しちゃうんだよね〜」と言っていた。
でも本当は、飲み会の時に俺が他の女性と話しているのを見ると『ざわざわする』から、つい飲み過ぎてしまい、酔っ払ってしまっていたのだそうだ。
その『ざわざわ』は『ヤキモチ』って言うんですよ、と教えてあげたら、ぽかんとしていた。
そうか、本当の本当に疎い人は、自分の気持ちにも気づけないのか。「この鈍感娘!」という八重子さんの声が聞こえてきそうだ。
なんだ。ヤキモチ妬いてもらえてたんだ。
意識してないだけで、ちゃんとそういう対象に入れてもらえてて、『特別』にもしてもらえてたんだ。
そう思ったら、つまづいて支えた俺の腕の中にいる芳子さんを離したくなくて、そのまま朝まで一緒にいたかった。
でも、まだ芳子さんは「好きかどうかわからない」と言う。
焦って拒否されたら、立ち直れそうになかったから、その日は悶絶しそうになりながら送って帰った。
家と言っても一人暮らしのマンションの1室。そう広くない部屋に入って、芳子さんは緊張しているみたいだった。
リラックスしてほしくて、とりあえずビールをすすめてみる。
いつも俺が座っている座椅子に、ちょこんと座ってビールを飲む芳子さん。
最近、仕事が忙しくて疲れてるみたいだったので、外よりゆっくりできるかと思ったのだ。
今までは、ただの後輩だったから、家に誘うなんてできなかった。
ひと月前に勢いで告白してしまい、一週間後にもらった返事は『特別』。
しかも、芳子さんが、俺と話していた同期の女の子にヤキモチを妬いてくれていたことがわかり、やっと一歩前進してもいいんだと、仕事が一段落した時期を見計らって、勇気を出して誘ってみたのだった。
芳子さんはすんなりOKしてくれたけど、恋愛方面には本当に疎い人だから、一人暮らしの男の部屋に入ることがどういうことなのか、よくわかっていないに違いない。
そもそもそれがわかっていたら、飲み会であんなに酔っ払わない、か。
普段の芳子さんは、しっかりしていて仕事もできる優秀な人だ。上司の信頼もあり、後輩にも厳しく優しい。男女問わずだけど、どちらかといえば女性の方に人気があった。嫌味なく、誰にでも公平に接する。そりゃあ頼りにされるよな、と思う。
周りへの気遣いもきちんとできて、やわらかい雰囲気を醸し出す。
そんな芳子さんは、酔うとふにゃふにゃになる。
しゃべり方はゆっくりで、目はとろんとし、ぐだくだになって、甘え出すのだ。
普段がしっかりしているだけに、このギャップにやられる男は後を絶たない。
大学時代、飲み会の帰りには、次に行こうと誘う男達をにらみつけながら、芳子さんを無事に送り届けるのが習慣になった。
俺が大学を卒業して、同じ会社に就職するまでの2年間、会社の飲み会があると誰かに持ち帰られるんじゃないかととにかく心配だったけど、元来結構な人見知りらしい芳子さんは「緊張するからさ〜」とあまり酔わなかった。
ところが、俺が入社して、一緒に飲み会に参加するようになると、また酔っ払い始めた。
ただでさえ好感度が高い芳子さんが酔っ払った姿は、やっぱり男を引きつける。
俺はまた、芳子さんに寄ってくる男どもを蹴散らして、無事に送り届ける役目を続けた。
芳子さんは「雄大がいると、安心しちゃうんだよね〜」と言っていた。
でも本当は、飲み会の時に俺が他の女性と話しているのを見ると『ざわざわする』から、つい飲み過ぎてしまい、酔っ払ってしまっていたのだそうだ。
その『ざわざわ』は『ヤキモチ』って言うんですよ、と教えてあげたら、ぽかんとしていた。
そうか、本当の本当に疎い人は、自分の気持ちにも気づけないのか。「この鈍感娘!」という八重子さんの声が聞こえてきそうだ。
なんだ。ヤキモチ妬いてもらえてたんだ。
意識してないだけで、ちゃんとそういう対象に入れてもらえてて、『特別』にもしてもらえてたんだ。
そう思ったら、つまづいて支えた俺の腕の中にいる芳子さんを離したくなくて、そのまま朝まで一緒にいたかった。
でも、まだ芳子さんは「好きかどうかわからない」と言う。
焦って拒否されたら、立ち直れそうになかったから、その日は悶絶しそうになりながら送って帰った。