初めての to be continued…
そして、今日。
芳子さんは家にいる。
「わ、美味しそう」
ギョーザを前にした芳子さんのあまりにも無防備な笑顔を見たら、かぶりつきたくなって、いや焦ってはいけないというブレーキがかかり、俺はフリーズした。
「?」
芳子さんが、皿を離さない俺を、きょとんと見つめる。
「あっ、ああ、すいません。あの、運んでください……」
「?……はい」
テーブルに向かう芳子さんの背中を見て、俺は首をぶんぶん振った。
まずい、これは、我慢しなければ。
サラダを取ろうと冷蔵庫を開ける。ついでにちょっとだけ頭を冷やした。
テーブルにサラダを置くと、芳子さんが聞いた。
「あとは?ご飯?」
「炊いてありますから、食べるなら持ってきますよ」
「じゃあ、ちょっとだけもらおうかな」
「わかりました」
この時のために用意した、芳子さん用の茶碗と箸。
ご飯に誘っておきながら、食器が1人分しかないということに、昨日の夜気が付いて、今朝、慌てて買ってきたのだった。
ちょっとだけってこのくらいか、と見当をつけて、芳子さんに聞いてみようと振り向いた。
「芳子さんご飯はこれくらいで、うわっ!」
俺のすぐ後ろに芳子さんがいて、余りの近さに驚いた。
お願いだから、そんな無防備に近づかないでください。
やばいんです、俺。
「あ、ごめん」
芳子さんがちょっと下がる。茶碗の中を見て、のんきに答えた。
「大丈夫だよ、それくらいで」
「あ、あ、ああ、じゃあ、これお願いします……」
「はーい」
茶碗を受け取った芳子さんが、なぜかそのままそこにとどまっている。
ごめんなさい。危険なので、早く俺から離れてください。
そう言う訳にもいかずに、ただ芳子さんを見つめていた。
「どうかした?」
「いや、なんで持ってかないのかなって」
「え、雄大のご飯も受け取ろうかなって思って。食べるよね?」
「あ、ああ、そっか。そうですね」
自分のことは、すっかり頭から抜けていた。
「お願いします」
「はい」
芳子さんが茶碗を受け取って、二つの茶碗を見比べている。
「今朝、慌てて買ってきました」
持っている箸も見せる。
「これも」
「わざわざ買ってくれたの?」
「1人分しかなかったから。皿はかろうじて2枚あったんですけど、あのサラダのやつも買いました」
用意周到じゃないことをごまかしたくて、笑ってみた。
そうしたら、芳子さんが一瞬息をもらして、固まってしまった。
もしかして、買わなくても良かったのに、とか思ってるのかと心配になって、顔を覗き込む。
芳子さんの身長は160cm。決して小さくはないけれど、俺との身長差だと、ちょっとでもうつむかれると覗き込まないと顔が見えない。
「芳子さん?」
「あ、あの……なんでもない。ありがとね」
顔が、赤くなってる気がした。
え、もしかして、具合悪い?
熱でもあるのかと様子を伺うと、茶碗をテーブルに置いて、深呼吸している。
部屋が暑いのかと思って、キッチンの換気扇を回す。それから、反対側の窓を少しだけ開けた。
もう12月だし寒くないように、と思う余り、換気を忘れていた。空気が薄いのかもしれない。
そんな俺を、芳子さんは不思議そうに見ている。
「あ、あの、換気しようかなって。ギョーザ焼いたし」
「ああ、換気ね。そうね、換気は大事よね」
「5分くらい開けますけど、寒くなったら言ってください」
「うん、大丈夫だよ」
窓を背にして、芳子さんを見る。具合は悪くなさそうだ。
芳子さんは、俺から受け取った箸をテーブルに並べている。
芳子さんは家にいる。
「わ、美味しそう」
ギョーザを前にした芳子さんのあまりにも無防備な笑顔を見たら、かぶりつきたくなって、いや焦ってはいけないというブレーキがかかり、俺はフリーズした。
「?」
芳子さんが、皿を離さない俺を、きょとんと見つめる。
「あっ、ああ、すいません。あの、運んでください……」
「?……はい」
テーブルに向かう芳子さんの背中を見て、俺は首をぶんぶん振った。
まずい、これは、我慢しなければ。
サラダを取ろうと冷蔵庫を開ける。ついでにちょっとだけ頭を冷やした。
テーブルにサラダを置くと、芳子さんが聞いた。
「あとは?ご飯?」
「炊いてありますから、食べるなら持ってきますよ」
「じゃあ、ちょっとだけもらおうかな」
「わかりました」
この時のために用意した、芳子さん用の茶碗と箸。
ご飯に誘っておきながら、食器が1人分しかないということに、昨日の夜気が付いて、今朝、慌てて買ってきたのだった。
ちょっとだけってこのくらいか、と見当をつけて、芳子さんに聞いてみようと振り向いた。
「芳子さんご飯はこれくらいで、うわっ!」
俺のすぐ後ろに芳子さんがいて、余りの近さに驚いた。
お願いだから、そんな無防備に近づかないでください。
やばいんです、俺。
「あ、ごめん」
芳子さんがちょっと下がる。茶碗の中を見て、のんきに答えた。
「大丈夫だよ、それくらいで」
「あ、あ、ああ、じゃあ、これお願いします……」
「はーい」
茶碗を受け取った芳子さんが、なぜかそのままそこにとどまっている。
ごめんなさい。危険なので、早く俺から離れてください。
そう言う訳にもいかずに、ただ芳子さんを見つめていた。
「どうかした?」
「いや、なんで持ってかないのかなって」
「え、雄大のご飯も受け取ろうかなって思って。食べるよね?」
「あ、ああ、そっか。そうですね」
自分のことは、すっかり頭から抜けていた。
「お願いします」
「はい」
芳子さんが茶碗を受け取って、二つの茶碗を見比べている。
「今朝、慌てて買ってきました」
持っている箸も見せる。
「これも」
「わざわざ買ってくれたの?」
「1人分しかなかったから。皿はかろうじて2枚あったんですけど、あのサラダのやつも買いました」
用意周到じゃないことをごまかしたくて、笑ってみた。
そうしたら、芳子さんが一瞬息をもらして、固まってしまった。
もしかして、買わなくても良かったのに、とか思ってるのかと心配になって、顔を覗き込む。
芳子さんの身長は160cm。決して小さくはないけれど、俺との身長差だと、ちょっとでもうつむかれると覗き込まないと顔が見えない。
「芳子さん?」
「あ、あの……なんでもない。ありがとね」
顔が、赤くなってる気がした。
え、もしかして、具合悪い?
熱でもあるのかと様子を伺うと、茶碗をテーブルに置いて、深呼吸している。
部屋が暑いのかと思って、キッチンの換気扇を回す。それから、反対側の窓を少しだけ開けた。
もう12月だし寒くないように、と思う余り、換気を忘れていた。空気が薄いのかもしれない。
そんな俺を、芳子さんは不思議そうに見ている。
「あ、あの、換気しようかなって。ギョーザ焼いたし」
「ああ、換気ね。そうね、換気は大事よね」
「5分くらい開けますけど、寒くなったら言ってください」
「うん、大丈夫だよ」
窓を背にして、芳子さんを見る。具合は悪くなさそうだ。
芳子さんは、俺から受け取った箸をテーブルに並べている。