初めての to be continued…
俺はあることに気が付いた。
「芳子さん、座椅子使っていいですよ」
座椅子の前に俺の食器、角をはさんだ隣に芳子さんの食器が置かれている。
「うん、でも、雄大はいつもここに座ってるんでしょう?」
「そうですけど、芳子さんは一応お客様だし」
「んー……」
芳子さんはちょっと考えて、『あっ』と何かを思いついた。
「じゃあ、これ借りる」
座椅子の上の座布団を取って、自分の下に敷く。
「これでどう?なんとなく公平でしょ?」
ねっ、と、笑った。

芳子さん、その笑顔は反則です。
ダメだ、どうしよう。

理性が吹っ飛びそうになるのを、かろうじて抑え込む。
見てはいけない。あの笑顔を見たら、体が勝手に動いてしまう。
「あ、そ、そうですね。あっ、俺ビールあっちに置いてたんだった。取ってきます……」
俺は、ビールを取りにキッチンに行った。

芳子さんに男性経験がないのは調査済みだ。何度か告白はされているらしいが付き合うまでには至らず、キスもしたことがないらしい、と八重子さんが教えてくれた。

怖がらせたくない。
大切にしたい。

とりあえず、なけなしの理性のために水も飲んどこうと、飲みかけの缶ビールとミネラルウォーターを持って、座椅子に座った。

< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop