カラシ色パーカー、冬の隅っこ
惰性の毎日とお飾りの私
「あの、すみません」
ふと声をかけられ、私ははっと顔を上げる。
瞬時に目の前の人の顔と時計を確認した。
あぁ、意外と時間が過ぎていた。
「お手洗いって...」
そう呟く彼女は未来の後輩になるかもしれない人。
そう、あくまで可能性だけ。
中高一貫の女子校に通い始めて早四年。
入試補助をするのは何度目か、果たして片手で収まるか。
きっと学年でいちばん参加してるだろう...きっと。
女の子を連れながら口の中で呟く。
2月初めの体育館は恐ろしい程底冷えする。
足裏に貼ったカイロが与えてくれる柔らかくも心もとない暖かさだけが救いだ。