カラシ色パーカー、冬の隅っこ
試験開始まであと20分、と言ったところか。
4年前の今頃、私は何を思っていたのか。
今はもうない校舎の3階の角部屋、私はそこで受験した気がする、確か。
息が詰まるような緊張感の中で補助生徒の優しい微笑みがすごく暖かかったのをかすかに覚えている。
もうその先輩の顔も思い出せない私は薄情だろうか。
だが、私がぬくもりを感じたその笑顔も実際はマニュアルに書かれたことを淡々と行っているだけ。
毎年プリントに太字で“笑顔で受験生を迎えましょう”と書かれている。
笑顔を浮かべているからと言って決して情熱を持って、とかではない。
それが補助生徒に与えられた職務で、それを守ることは義務と言えるだろう。
まあ、補助生徒をやっているのも言うなれば一種の惰性にすぎない。