カラシ色パーカー、冬の隅っこ
「ここです。」
私は連れていた女の子にそう伝えた。
淡い黄色のカーディガンを着たその子は人懐っこそうな笑顔を向け、ありがとうございます、と言った。
私は形式的に笑顔を返し、その場から離れた。
きっとあの子は私とはちがう、学校でも家でもたくさんの人に愛されてきたのだろう。
多分、たくさんの友達に応援されて今この入試に臨んでいる。
学校では空気として過ごし、家では親の見栄の道具として扱われていたあの頃の私とは...
あぁ、ひとつ同じことをあげるとすれば、希望を抱いていること。
あの時は私もこの先に希望を持っていたと思う。