隣の席でキミと秘密の甘い恋【完】
「ダンスはやってない。…けど、身体を動かすのは割と得意なんだ」


「そうなんだ!いいなぁ……羨ましいっ」



と、感動に浸っていたわけだが、気がつく。



……あれっ。

ってことは、つまり、一年生で踊れてないのは私だけ……?



「じゃ、俺は帰るから」


「ちょっ、ちょっと待って……!」


「え、なに?……腕、離してくれる?」



帰ろうとした斎宮くんの腕に咄嗟にしがみついてた。



うっ…すっごい嫌な目でみられてる…。

でも、ここで怯むわけにはいかないもん…!



「私にダンスを教えてください!お願いします!」



じゃないと、私……一生踊れる気がしないもん……!

それにこのままじゃ、私一人だけが取り残されちゃう……!



「やだよ、めんどくさい」


「なんで~!友達じゃん!私、このままじゃ、本番で一人だけ踊れず恥かいちゃうよ……!」



腕にしがみつく私を、必死に剥がそうとする斎宮くん。



「お願い!ダンス教えてくれたら、なんでも言うこと聞くから!」


「……なんでも?」


「うん!なんでも聞く!なんでも聞いちゃう!だからお願いしますっ」



その時一瞬だけど、斎宮くんの口元に笑みが浮かんだ気がした。

と、思ったのも束の間で、次の瞬間には呆れた顔をしていた。



……やっぱり笑った気がしたのは私の気のせいだった。
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