隣の席でキミと秘密の甘い恋【完】
「俺は目立ちたくないし、静かに過ごせればそれでいいから」



それを言われてしまっては、なにも言えなくなる。



斎宮くんにとっては、目立たないことが最優先事項だもんね。



それはちゃんと分かってるけど。

……でも、せっかくの体育祭なんだし、やっぱりちょっと勿体ない気もする。



まぁ、私が今更なにか言ったところで、種目は決まってるわけだし意味はないんだけど。



「俺のことより、自分のことを心配しなよ」


「わたし?あ~…うん、そうだよね」



一応踊れるようになったけど、本番でもちゃんと踊れる自信ないし……。

まだまだ練習しないとね。



「あれ?メガネは?」



突然現れたイケメンにちょっとだけ驚く。

さっきまでメガネしてたよね?



「邪魔だからしまった。……ここには朝桐しかいないしな」


「…そっか」



今みたいに私の前で、メガネを外すことはちょくちょくあった。



なんだか私に心を許してくれているみたいで、それが素直に嬉しかった。

もちろんそんなことは絶対言わないけどね。



斎宮くんのヒミツを知ってから、もう一カ月も経つんだね。



今日まで色んなことがあったなぁ。

色んなことがありすぎて、途中途中の記憶がないかも。



……こうやって普通に会話をしてるのが、ちょっと不思議だな。



今までの斎宮くんじゃ考えられなかったもんね。



ようやく私と真のお友達になってきたってことなのかな!



「……さっきから何みてんの?」


「えっ、いや。なんていうか…斎宮くんと話してるのが不思議だなぁって思ってたの」



最初の頃は、私のこと無視ばっかするし、態度もいまより冷たかったし?

ふふ、今となってはそれも思い出だけど。



「それはこっちのセリフだよ。女と関わるつもりなんてなかったのに、今こうして朝桐の練習に付き合ってるなんて、変な感じ」


「それは私が友達だからでしょ?」


「……友達、ねぇ」



意味深な呟きをする斎宮くん。



何故かちょっと呆れているようにも見えた。
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