エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
そしてこのレストランに入ったものの、メニューを持つ私の手が震えていたからか、大きな手で包み込んでくれた。
彼の手も冷たかったが、その行為のせいで体が火照るのを感じた。
「そうだったんだ。ベッドで寝ている自分が頭に浮かんで……。忍、看病してくれなかった?」
「はい。まだお付き合いする前でしたが、翌日会社を休まれたので、マンションを訪ねました。そうしたらフラフラになっていて……」
とても放っておけなくて、ひと晩付き添った。
私はあの日から彼との距離が一気に縮まったと感じている。
「そっか。でもその前から忍のことを狙っていたんだろうな、俺」
「えっ?」
「はっきりと思い出せないんだけど……。高熱でうなされていたのに、忍がそばにいてくれるのがうれしかったような気がするんだ」
そんなの初耳だ。
一晩中唸っていた彼は、ただただ苦しそうだった。
彼はメニューも見ず、物思いにふけっている。