エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「ボルダリング?」
「はい。試合を見て感心して、宏希さんもジムでチャレンジしたんですよ。でも難しくて……」
「そりゃそうだ。無謀だな、俺」
もともと鍛えていた彼は、かなりの高さまですいすい上っていったのでインストラクターも驚いていたが、さすがに指は鍛えておらず、せり出した壁は克服できなかった。
「多分……忍にいいところを見せたかったんだろうな」
彼が紅茶を口にしたあとボソリとつぶやくので、照れくさい。
「今度、和宏くんを連れてサッカーを見に行こうか」
「いいんですか? ……あっ、いえっ」
思わず身を乗り出したが、私は家政婦だった。
これ以上甘えてはいけない。
「俺が一緒に行きたいんだけど、ダメかな?」
きっと宏希さんは私が遠慮していることに気づいている。
なにも言えずに目を泳がせると、彼は続けた。
「忍、サッカーチームのスポンサー契約にも協力してくれたんだよね」
「はい。情報収集のお手伝いはしました」