エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
でも、彼が悪いということだけは絶対にない。
あのときかばってくれなければ、私が車にはねられていた可能性が高い。
そうしたら、和宏はこの世にいなかったかもしれない。
「私、宏希さんに甘えすぎだと思って……」
「俺の気持ちばかり押し付けて……。ごめん」
彼の手が離れていくのが切ない。
けれど、これでいい。
「この紅茶、おいしいですね。アールグレイかな?」
重くなった空気を払しょくしたくて、笑顔を作る。
「忍の淹れてくれる紅茶のほうがうまいよ。こうして一緒に飲めることが幸せだけどね。でも、もう少ししか時間がない」
腕時計に視線を送った彼が本当に残念そうで、私との時間を楽しんでくれていることが伝わってくる。
それに『一緒に飲めることが幸せ』だなんて。
私にとっては、最高にうれしい発言だった。
「今日は楽しかったです。こんなにゆっくりしたのは久しぶりで……」