エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
沖さんに会えるんだ……。
あんなにお世話になったのに黙って消えたお詫びもしたい。
「わかりました。うかがいます」
久しぶりのレーブダッシュだと思うと、ちょっと心が弾んだ。
会社までは電車で二十分ほど。
懐かしい駅に到着した瞬間、様々な思い出があふれてくる。
毎日この駅から、目の前にそびえたつ社屋に意気揚々と向かっていたっけ。
大変なことももちろんあったが、楽しかったな。
営業統括部は若い人が多く、エネルギッシュで団結力もあった。
皆仲がよかったので、苦しい局面も全員で乗り越えてきたという印象が強い。
十二時少し前に玄関の前まで行くと、沖さんの姿が見えた。
ちっとも変わっていない様子に、頬が緩む。
「おぉ、波多野!」
「ご無沙汰しています」
立ち止まって深々と頭を下げると、彼のほうから歩み寄ってくる。
「本物?」