エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「どれだけ見合い写真を持ってこられても見もせずに返却しているのは、波多野との関係をつなぎ直したいんだろうなと思ってたけど、見つけたと聞いてホッとした」
「いえ、でも私は……」
「そのとき、アイツの泣き顔を初めて見たんだ。『波多野が見つかった』と声を震わせて、目頭押さえてた」
まさか……。
宏希さんが泣いたなんて。
私も泣き顔なんて見たことがないのに。
「遅れてごめん」
そこに宏希さんがやってきた。
ジャケットを羽織りながら颯爽と歩くさまは、つい見惚れるほどのスマートさ。
「おぉ。忙しい?」
「わけのわからない決済ばかりでため息が出る。波多野さん、悪かったね」
沖さんと話していたら、ここに来た目的を忘れそうだった。
慌ててバッグから封筒を取り出して渡すと「助かったよ」と柔らかな笑みを浮かべている。
「飯、行こうか。混むと思って予約した。寿司でもいい?」
こういうところはさすがだ。