エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「あのとき、適当に『考えようね』とでも言えたはずなのに、難しいことを正直に伝えていただろ? 実はちょっとびっくりしたんだけど、これが波多野さんの接し方なんだなと思った。和宏くんを子供扱いせず、ひとりの人間として真剣に向きあってるんだと」
それほど難しいことを考えて和宏と接しているわけではない。
ただ、和宏にとってたったひとりの家族である私が、彼の心のよりどころになるべきだとは常々思っている。
そうすると、おのずと適当な発言でごまかすことはできない。
「そう、でしょうか……」
「うん。俺はそれを見て、自分の仕事のありようも考えた。戦略的にはったりをかますことはあるけどそれは自信を示すための誇張であって、できないことをできるとは決して言わない。そうしていると信頼を獲得できるようになる」
私は実際にクライアントとは対峙したことがないのでよくわからないが、彼の言うことは理解できる。
適当に『できます』と伝えられていたのにも関わらず、あとで『ダメでした』と言われるより誠実だ。