エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
何度記憶をなくしても
そしていよいよ出勤。
和宏を幼稚園に預けてから、久しぶりに営業統括部のドアの前に立っていた。
けれども緊張が増してきてなかなかドアを開けられない。
「どうした?」
すると、うしろから宏希さんの声がした。
「あ、えっと……」
「一緒に入ろうか」
「お願いします」
カチカチになっている私に気づいた彼は、頬を緩めて先に入っていく。
「おはよう」
「おはようございます」
宏希さんへの挨拶が続いたそのあと……。
「波多野さんだ!」
「おかえり」
ここを辞める前に仕事を共にしていた人たちから次々と声があがり、なんだか照れくさい。
しかも『おかえり』だなんてありがたい。
「皆、落ち着いて。以前からいた人はもちろん知っているな。波多野忍さんだ。今日から週に三日、一時まで勤務してもらえることになった」
宏希さんは一番奥の自分のデスクまで行くと、私を手招きして紹介してくれた。