エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
沖さんに声をかけられてハッとした。
気がつけば十三時すぎている。
必死にやっていたらあっという間だった。
「お先に失礼します」
皆が仕事をしているのに抜けるのは気が引けるが、これが今の生活スタイルなのだから慣れなくては。
正面玄関に向かうと、横付けされた高級車から宏希さんが降りてくるところだった。
彼は、助手席から降りたおそらく秘書の男性とすぐさまなにやら話しだし、こちらに歩いてくる。
少し横によけたが、彼は私に気づいて一瞬視線をあわせて微笑んでくれた。
そして通り過ぎたあと、秘書にはわからないように背中のうしろで手を振っている。
なんだか秘密の関係のような背徳感があり、耳が熱くなるのを感じた。
告白の返事はいらないと言われた。
しかしはっきりと彼の胸の中に自分という存在がいるのだと知り、苦しいほどドキドキしている。
もし私たちの気持ちが再びつながったとして……この先歩く道が重なることはあるのだろうか。