エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
沖さんに依頼されて、宏希さんの決済が至急必要な書類を持ち重役フロアに足を向ける。
社長室に赴いた日の記憶が緊張を誘うものの、沖さんが宏希さんの在室を確認したと言っていたので、大丈夫。
専務室の前でノックをすると、「はい」とすぐに返事があった。
でも、宏希さんの声ではないような……。
ドアを開けると、見覚えのある人が宏希さんのデスクの前に立っていた。
社長秘書の佐藤さんだ。
もちろん、仕事のいくつかは社長と連携しているはずなので、佐藤さんがここにいてもおかしくはないが、息を呑んだ。
「あぁ、沖が来るかと思ったよ。パシリにされたのか……」
宏希さんは一歩入ったところで動けなくなった私に気づいたらしく、柔和な笑みを浮かべて歩み寄ってくる。
「こちらの書類に決裁印をお願いします」
「うん」
彼と会話を交わしている間も、佐藤さんに凝視されていて落ち着かない。